【検証】「Sell in May, go away」は本当か — 米株 76 年・日経 30 年データで月別アノマリーを再検証、日本株は「Sell in April」の方がフィット
一行サマリー
GW 中によく聞く相場格言「Sell in May, go away」を、米株(S&P 500、1950-2026)と日本株(日経平均、過去 30 年)の実データで検証。米株では 5-10 月のリターンは確かに 11-4 月より弱いが、直近 12 年は中央値 +6.3% で 82% がプラス。日本株では「Sell in May」自体が当てはまらず、4 月末売却の方がアノマリーとしてフィット。
「Sell in May」とは何か
英国の伝統的相場格言「Sell in May and go away, come back on St. Leger Day」が起源。St. Leger Day は 9 月の英国の競馬イベントで、「夏の間はマーケットを離れて秋に戻れ」という意味。米国版では「Halloween Indicator」とも呼ばれ、11 月 1 日〜4 月末に保有 / 5 月 1 日〜10 月末に現金化 という戦略が想定される。
米国株(S&P 500)での検証
1950 年以降の長期データ
- 5-10 月の 6 ヶ月平均リターン: +2.1%、ポジティブが約 2/3
- 11-4 月の 6 ヶ月リターン: 5-10 月より明確に強い(出典: Visual Capitalist 等)
- → 確かに「夏は冬より弱い」傾向は歴史的に存在
5 月単月
- 1950 年以降の 5 月平均: +0.4%
- 直近 13 年(2013-2025): +1.5%、13 年中 12 年プラス
- → 長期では「弱い月」だが 直近では普通にプラス
直近 12 年の 5-10 月(半期)
- 中央値: +6.3%
- 平均: +5.1%
- ポジティブ率: 82%
- → 「Sell in May が機能した時代は過ぎた」とも読める
結論: S&P 500 では 歴史的には根拠あり、直近では弱まったアノマリー。「現金化して秋に戻る」戦略は近年では 機会損失を生む確率が 8 割超。
日本株(日経平均)での検証
過去 30 年の 5 月単月
- 上昇 16 回 / 下落 14 回 = ほぼ五分五分(53.3% / 46.7%)
- 5 月平均: ▲0.1%(米株 +0.4% より弱い)
5 月末→9 月末(2000-2022)
- 上昇 12 回 / 下落 11 回 = 完全に五分五分
- → 「Sell in May」は日本株では当てはまらないというのが野村ほか主要分析の結論
「Sell in April」の方が機能する
- 過去 30 年、9 月末に買い、翌年 4 月末に売る 戦略: 30 回中 17 回上昇(56.7%)
- 「夏ではなく 春先(4 月末)に売る」のが日本株のアノマリーとする見方
解釈
- 3 月期決算企業比率が高い: 4 月発表の決算前後でポジション調整が集中
- 配当落ち(3 月末)後の戻り: 4 月に戻り高値を付けやすい
- GW 中の薄商い: 必ずしも下げに直結しない
- 5 月決算ラッシュ: サプライズで上下に振れ、月平均は中立化
結論: 日経平均では「Sell in May」を盲信すると 誤った行動を取る。「4 月末に一部利確 → 9 月末に再投入」 の方が実態に近いアノマリー。
なぜ夏が弱いと言われてきたか(理論的背景)
- サマーバケーション: 米英の機関投資家・トレーダーが夏季休暇で取引参加が薄まり、流動性低下 → ボラティリティ拡大 + リスクオフ傾向
- 企業イベントの偏在: 米企業決算は 1/4/7/10 月に集中、夏は材料不足
- 税制要因: 米国のタックスロスハーベスティングが 11 月から本格化、買戻しが翌年へ
- 「噂を買って事実で売る」のサイクル: 業績好調期待で上半期買われ、決算ピーク後の反動が夏に出やすい
これらの要因は 構造的だが時代と共に変化する。アルゴリズム取引の普及、24 時間グローバル化、機関投資家の運用機械化で、季節性は緩やかに薄まっているというのが直近 10-15 年のデータ感。
個人投資家への実用的な含意
やってはいけないこと
- 格言だけで全保有株を 5 月に現金化: 直近 12 年で 82% は機会損失になる
- 決算を持ち越したくないから現金化: 個別銘柄の決算サプライズは季節性より遥かに大きい
- 米国アノマリーを日本株に適用: 日経平均では Sell in May 自体が機能しない
やった方がいいこと
| アクション | 根拠 |
|---|---|
| 個別銘柄の決算カレンダー優先 | 5 月の 3 月期決算ラッシュは銘柄ごとのリスクとリターンが圧倒的 |
| キャッシュ比率を「やや高め」にする(+5〜10pt) | 5-10 月の不透明感に対応するバッファ、ゼロは過剰反応 |
| 9 月末-10 月の押し目買いをプリセット | 統計的に押し目になりやすい時期 |
| 連休前後にマクロ俯瞰 | GW 整体 5 つのこと と接続、季節性より構造変化が重要 |
| 日本株は「4 月末利確 / 9 月末再投入」を意識 | 30 回中 17 回(56.7%)の上昇率を持つ実績ベースの戦略 |
マイルール例
- 5 月: 保有株の 決算前後 5 営業日 にだけ警戒、それ以外はノーマル運用
- 6-8 月: キャッシュ比率を平常 +5pt 上げる
- 9 月末-10 月: 押し目買いで通常配分に戻す
- 11-4 月: フル投資
まとめ
「Sell in May」は 米株では歴史的根拠ありだが直近では弱まったアノマリー、日本株ではほぼ機能しない(代わりに「Sell in April」が部分的にフィット)。格言を盲信するのは個人投資家として最悪の選択で、自分の保有銘柄の決算カレンダーとマクロ環境 の方が遥かに重要。
ただし、夏季の流動性低下とボラティリティ拡大は構造的に存在するため、キャッシュ比率を 5-10pt 上げる 程度の防御は理にかなう。ゼロかフルかの極端な対応より、グラデーションでリスクを下げる のが現実的。
関連リンク + 出典
- 個人投資家が連休中にやるべき 5 つのこと(GW 整体フレームワーク)
- Visual Capitalist: Average S&P 500 Return by Month Since 1950
- 野村ウェルスタイル: セル・イン・メイは有効か?長期日米株価から検証
- マネックス マネクリ: セルインメイというアノマリーを考察する
- かぶまど: 株は「5 月に売れ」って本当?過去 12 年のセルインメイを検証
本記事は過去データの整理を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。過去のアノマリーが将来も再現される保証はなく、投資判断はご自身の責任で行ってください。